高校生の時から、
学校に遅刻すると授業途中から教室に入るのが嫌すぎて、
遅刻確定の朝は学校に行かずに、
ブックオフや図書館へ行ってずーっと本を立ち読みする習慣が芽生え、
一年の三分の一くらいは学校へ行かずにサボって過ごしていたのです。
そして大学生になってから更に拍車を掛け、
都内に点在する色々な地域のブックオフ巡りをして、
書籍をコレクションするようになったのです。
あの時、漫画版ナウシカやAKIRA、新井英樹、松本大洋、手塚治虫、つげ義春作品など、
ちょっと一筋縄ではいかない、解釈の難しい漫画の収集にハマり、
その中の一つとして「海獣の子供」に触れました。
大学生の時に読んだ時はサッパリ理解出来ず、
とにかく難しい印象でしたが、
クジラのシーンがやたらと鮮明に残っていました。
大学を卒業し社会人になって、漫画だけでなく小説や映画など、
段々と制作の背景を想像しながら鑑賞出来るようになり、
ようやく今なら少しでも理解の糸口が掴める気がして、
上映会に応募したのです。
映画の感想
ものすごく良い作品でした。
作画・CG・脚本・声優・音楽において、
各部門のプロフェッショナルが活き活きと制作されていたことが、
作品から伝わってきました。
「わかりやすくてキャッチーな」作品が求められて大ヒットするなか、
「理解が難しいけれども素晴らしい」作品がより多くの人に観てもらえることを望みます。
近年のヒット作を観ると、
誰にでもわかるようなカタルシスが、
マーケティングされたように配置されている背景が透けて観えてしまうことも多く、
げんなりしてしまうことも多いのですが、
「海獣の子供」は劇場からの帰り道、
「あのシーンはどういう意味だったのだろう。」とか、
頭の中で疑問や思考が渦を巻いて、考え込んでしまう類の作品です。
「ああ、このモヤモヤしながら帰る感じ。懐かしい。」と久々の映画体験に満足しました。
少しネタバレになるかもしれませんが、
そもそも原作がある映画なので、少し本編に触れながら感想を書きます。
14才の少女の夏休みの神秘体験としてフォーカスされています。
「千と千尋の神隠し」の構造に似ているかもしれません。
(夏休みのSFと捉えると、ペンギンハイウェイも近い世界線ですね。)
物語を一番マクロな視点で捉えると、
傷を追った少女が、不思議な世界の体験をして帰ってきて、少し成長する物語です。
(占いもそうですが、)物語のチカラが心の傷を癒すのです。
テーマは、「海」「原始」「生と死」です。
生命は海から誕生したという「海からの創世」が主題になっています。
(同じ文中並べるのは恥ずかしいですが、ちなみに僕の写真作品処女作も同じテーマです。)
[mikata.の処女作品]
作者は現代日本版の"神話"を創造したかったのではないかと僕は思っています。
鑑賞後、かなりスピリチュアルな作品だったのだなと気づきました。
(人体は宇宙。全ては繋がっている。風には全ての記憶が刻まれている。)
実はテーマに関しては、
「君の名は。」に似ている部分もあり、
生命とは何か?宇宙とは何か?時間とは何か?
という根源的な問いが共通しています。
(「君の名は。」にも細胞分裂し宇宙が膨張していく抽象的なシーンがありましたよね。「海獣の子供」はその抽象度高いシーンの比率が大きい作品だとも言えます。)
作品の全容を理解するのはSFや神秘学などの広範囲の知識を要すると思いますが、
とにかく、主人公の体験した出来事は「謎」に満ちていて、神秘的なのです。
もし劇場へ行かれる際は、「全てを理解しよう」と意気込むと楽しめないかもしれません。
映画のキャッチコピーにもなっているように、
「一番大切な約束は 言葉では交わさない」
つまり"言語化できないこと"が大切で、
謎は謎のまま、つまり各々の解釈に任せる余白があります。
(トークショーで渡辺歩監督も、夏休みに体験した謎の神秘な物語。と言及されていました。)
映像美はとにかく素晴らしく、
子供の頃に夢見た光景を実現したような映像体験が出来ます。
例えば、
魚のように綺麗な海に潜って目を開けながら泳いでみたい。深海を潜りたい。クジラを近くで見たい。ずーっと海や星を眺めていたい。
って一度は考えたことありますよね。
アニメーションならそれを映像で表現できます。
ビジュアル的な映像美の癒しも今作の醍醐味です。
(現実では出来ないような、海を様々な時間・角度・深さで体験できるイメージです。)
昨年はペンギンハイウェイが素晴らしかったですが、
今年は海獣の子供という素晴らしい作品が誕生しました。
オススメの映画作品です。ぜひ。
あ、最後に占い師的な視点を付け加えると、
主題歌を歌う米津玄師さんは魚座ですね。
海という主題、スピリチュアルなテーマにはぴったりの魚座。
最高の采配です。作品を牽引していってくださると思います。