レコードをかけてレコードに針を落とす。
回転するレコードの溝を針が走ると、
「プチッ..」という音ともに音楽が流れ始める。
Bill Evans「UNDERCURRENT」を回しながら、
ジャケットの写真を眺める。
人生が意外とまだまだ長いことに気がついた今、
少人数のjazzバンドを組むのもいいかもしれないと気の抜けた発想が脳裏をよぎる。
jazzのコードはとても難しい。
またあの壁にぶつかったら、今度は乗り越えられるのだろうか。
今度、御茶ノ水にでも教本を探しにいこうか...
って、
こんな格好つけたことを書きたい訳ではなく。
山田稔明さんの名盤「新しい青の時代」のレコード盤が手元に届きました。
2013年に発売されたCDアルバムは5年の時を経て、
レコード盤になって、更なる進化を遂げたのです。
中央:「新しい青の時代」レコード盤
右:「新しい青の時代」CD盤
クラウドファンディングの特権として、
「special thanks」にファウンダーの名前が記載されました。
僕ももちろんそのうちの一人として、
歌詞カードにはしっかりと「mikata.」って書いてあります。
ふふふ。
敬愛している音楽家の作品にほんの少しでも携わることのできた証です。
レコードの針を落として、流れてきた音楽たちに
改めて名盤であることを再確認する。
2011年の震災以降にライブハウスで演奏されてきた楽曲たちを聴くと、
あの時の空気感や記憶が蘇ります。
ふとした拍子に、
いとも簡単に壊れてしまう平凡な毎日の暮らしを描いた唄たちよ。
今だって一度足りとも忘れていないよ。
間違った生き方を大きく変えるには、
とても長い時間と大きな気力が必要で、
だからといって諦めている訳ではないんだ。
レコードの、音楽の不思議なチカラを感じながら、
心が立て直した音を聞いた気がした。
僕たち聞き手がしっかりと意識を持って
支えないといけない音楽家にお金を出すこと。
これは何も音楽だけではなく、
例えば"食べ物"にも言えることだと僕は思う。
(もちろん、この世の"あらゆる商品すべて"に言えると思います。)
先日見学した澤井農場さんは数少ない東京の米農家で、
今もなお、八王子の水田風景を守っていらっしゃいます。
「アイガモ達のチカラを借り、
農薬と化学肥料を未使用でお米を作ることは本当に骨が折れる仕事で、
しかも儲からない仕事です。
でも僕たちは代々受け継がれてきたこの水田を残すために、
意志を持って続けています。」
というお話しをお聞きしました。
別に僕は無農薬が正しくて、
農薬を使うことが正しくないと
良い子を気取って言いたい訳ではない。
いつかは地球(宇宙)がなくなってしまう運命だとしたら、
ほんのわずかな瞬間の"正しいこと"なんて何の意味も持たないかもしれない。
でも少なくとも農薬を使用することで、
虫の数は減少し、それを食糧にしている鳥の種類が減少していることを、
僕は知ってしまった。
東京の水田風景が味気のない景色に移り変わってしまうことを、
僕は知ってしまった。
僕が買っている米は、
CO2を排出しながらわざわざ遠くからトラックが運んでいることを、
僕は知ってしまった。
F1種という現在主流の種は、
自家採種が難しい、雄性不稔という技術を使った「生命力の低い品種」であることを、
僕は知ってしまった。
米の年間消費量は一人あたり平均約60kgだ。
何も考えずに5kgの米を平均2,000円くらいで購入しているとすれば、
年間の支出は約25,000円。
それを約2倍の値段である無農薬の東京産の米に変えると、
年間支出は約50,000円になる。
たった年間25,000円の差で、
東京の水田と虫や鳥たちを守り、CO2排出量を少なくすることができるのだ。
窮屈な村社会から解放されたことで自由を手に入れた僕たちは、
その反面で隣人の顔が見えづらくなってしまった。
お米を作っているのが近所の佐藤さんではなくなり、
野菜を作っているのが近所の鈴木さんではなくなり、
家を建てているのが近所の大工さんではなくなり、
服を作っているのが服部さんではなくなったのだ。
誰が作ったかわからない食べ物を買うことは、
ストレスこそ少ないが、面白みがない。
歯を食いしばって頑張っている隣人に敬意を持ってお金を払うことで、
この世界のあらゆる問題は少し和らぐかもしれない。
(ここで右傾化だ保守化だと騒ぐ人は、本当に愚かだと思う。僕は国という形のないものを愛することはできない。別に左翼でもない。)
それは「どの政党に票を入れる」なんてことよりも、
もっと有効な手段だと思う。
大きな企業によって効率化・機械化された商品を購入することで、
隣人はおろか、自分の首を締めているかもしれないことに、
そろそろ気づいた方が良いかもしれない。
その商品の価格が安い要因は、
人の手を必要とすることなく作られている。
人の手が必要ないということは、
いずれはあなたの職も失くなるということだ。
現代の経済成長の原理は、"便利・快適"である。
しかし僕たち消費者が利便性のみを追い求めているうちに、
生きにくい環境は加速し、味気をなくしていくだろう。
お金を払うときに、
何を信条にしているか。
意識していきたい。