am9:56
自宅を出発。
久しぶりに自転車で渋谷へ向かう。
am10:45
渋谷に到着し、小腹が空いたのでBOUL'ANGEへ。
新宿の店舗には数回訪れたことがあるが、渋谷店は初の来店。
(昨年の店舗オープン以来、店前を通る度に気になっていたが、入り口の敷居が高い感じが原因で入る勇気がなかった。)
パン・オ・ショコラとホットカフェラテを購入。
壁面のメニューにはドリンクのサイズ一覧がフランス語で書かれていて、
PETIT(プチ)しか解らずドキドキしてレジへ行くも、
レジ前メニューには「S/M/L」の英語"表記"。
"拍子"抜けと共に安堵して注文する。
パン・オ・ショコラがまるで高級スイーツのように、完璧な美味しさで感動する。
クロワッサン生地の極限までにサクッとした食感の追求度合いに驚く。
1Fスペースは新宿店よりも作り込んだ設計でとても好い感じだ。
2Fのイートインスペースでパン・オ・ショコラを食べていると、
後方8人くらいの集団の会話が耳に飛び込んでくる。
「バズらせるためには"エロ動画"が必要。導入として。でもリピートさせるためには、コンテンツは"エロ"だけではだめで・・・」
と中心に座っている髭を下顎にたくわえた(男性ホルモン多めの)イケメンが雄弁に、大声で語っていた。
【イートインスペースの30分以上のご利用はご遠慮ください】
後方8人集団は靴を脱いで、
椅子に胡座(あぐら)をかきながら長丁場の会議をしていて、
明らかに30分以上の"ご利用"になるのだろうなと思ったが、
ここはIT企業の巣窟「渋谷」と、
洒落た「表参道」の汽水域だったことを思い出し、
まあ仕方ない。仕方ない。
何より、興味がない。
と、パン・オ・ショコラの芸術的な美味しさに意識を戻す。
打って変わって前方には、
2人の欧米人がお互いゆったりとした目配せをしながら、
パンの味を楽しんでいる。
前方と後方。
そのコントラストに、この街の不思議さを垣間見る。
あの感覚、
これはあの感覚に近い。
本屋の漫画コーナーの、
18歳未満禁止の商品ではないのに、
しかし煽情的な漫画の表紙がズラーっと並んでいる光景をみたときに似ている。
(電車の中吊り広告もその類だ。)
この路線が確実に売れると判断されるや否や、
指示通りに作られていったセオリー通りの漫画の表紙たちは、
恥ずかしげもなく陳列棚にコピー&ペーストされる。
この光景はいつも「この街は随分恥ずかしい。」と思わせる。
(ハワイ島へ訪れた時のスーパーの書棚はダイエット本が軒を連ねていて、それはそれで驚いたけれど。そして、ヨーロッパの本屋はどんな陳列だったか全く覚えていない。でもきっと、この街とは全然違う風景が想像できる。)
後方8人集団の会話も、
煽情的な漫画の表紙がなるべく目立つ所に陳列されている本屋も、
「何を売るのか。」ではなく、
「何がたくさん売れるのか。」が大切なのだ。
(そして、圧倒的に共有空間に対しての美意識が低い。)
しかし面白い事に、
その雑多さこそが、
ある種、この街の暮らしやすさにも繋がっている気がしてならない。
(もちろん子供も一緒に空間を共有している場で、有害図書ギリギリの表現がたくさん転がっているのは、男性主権名残の社会問題だと思うけれど。そこらへんの議論はTwitterで議論好きな人がしていれば良いと思う。)
しかし新たな分断はもう、始まっている。
ええじゃないか。では通じない文化が輸入され始めている。
お洒落な店では、お洒落な会話しか出来ません。
商売は、信念を持ってやらなければいけません。
街には、美しいものしか存在してはいけません。
こんな絶対的な縛りが土地を覆っていたとしたら、
街は美しくなるかもしれないが、きっと息が詰まるだろう。
壁面のメニューにはフランス語、
レジ前のメニューには英語。
生き残っていくには、器用さが必要だ。
二枚舌の上手な街が語りかけてくる。
そんなことを考えながら、
食べ終わったトレイを返却し、
店を後にして、246に飛び出して美術館を目指した。